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12.09.21 KAITEKIアグリカルチャーを目指して

 現在、約70億人の世界人口は2050年には約90億人になると言われています。20世紀の爆発的な人口増は化石燃料の大量消費による緑の革命*により支えられたといっても過言ではありません。しかしながら地球温暖化や化石資源の枯渇そして水不足等が懸念される21世紀においては、その様な資源の浪費の上に成り立つ食糧増産を継続することは難しく、より資源の浪費のない持続可能な農業を目指すべきと考えられます。そうして得られた食べ物を美味しくいただきながら私たちの健康を維持・増進していける社会がKAITEKIな社会ということが出来るでしょう。地球快適化インスティテュート(TKI)ではこの様な持続可能な農業と、それに基づく食の供給をKAITEKIアグリカルチャーと名付けて、その実現に向けて取り組んでいます。

 2050年までの長期の社会動向分析と食と農を取り巻く現状・予測分析を行った結果、21世紀の食糧需給とマーケットについては以下のようになると考えています。
①経済的な視点も含めて食の供給を考えた場合、十分な量の食の供給が困難になる。
②新興国をはじめとした経済発展に伴う生活水準の向上により、より高度な食への要求が増加する。

 人口増加を続ける新興国の人々が先進国並みの豊かさを享受しようとすることは当然の流れであり、現行のままの農業・畜産業・水産業では、食糧が量的にも質的にも不足していくと考えられます。特にTKIは、大量生産のみに目が向けられた20世紀の農業では考慮される事のなかった持続可能性への視点が21世紀の農業・食で最も大切なことと考えています。中でも水ストレスへの対応と温室効果ガス(GHG)の削減が重要と考えています。

 世界の淡水の70%が農業に使われていること、そして、人間が利用できる淡水は限られており、その淡水が地球温暖化や人口増により不足していくことを考えると、少ない水を出来るだけ効率的に使い食物を育てる次世代型節水農業、あるいは豊富に存在する海水をより安価に得ること、さらには水のリサイクル利用を図ることなどが重要性を増すと考えられます。

 また、冒頭に述べた緑の革命では多量の化石燃料を用いて作った合成肥料が大きな役割を果たしましたが、過剰に施された肥料中の窒素やリンは地中から漏れ出して地下水や海洋を汚染し、富栄養化によりメキシコ湾を始めとした死の海域が生じています。土中に残存した窒素肥料分は土壌中の微生物の働きで窒素循環の最終工程である脱窒により窒素へ戻りますが、一部が脱窒前に亜酸化窒素(N2O)として大気中に放出されます。このN2Oは二酸化炭素の300倍以上の温室効果のあるGHGであり、既に二酸化炭素換算で全GHGの8%を占めていますが、その7割は農業由来と言われています。肥料の施し方も、例えば水に溶かした肥料を根の周囲に有効に吸収される様に供給すれば、少ない水、少ない肥料で作物を得ることが出来ます。そうする事によって地中に残留する肥料も少なくなり、その結果としてGHGであるN2Oの発生量を少なくすることができます。

 この様に水ストレスおよび温室効果ガスへの対応は、21世紀の持続可能な農業、KAITEKIアグリカルチャーにとって極めて重要なテーマであり、TKIでは農業分野の最重点テーマとして取り組んでいます。

*緑の革命: 1940年代から1960年代にかけて高収量品種を導入したり、化学肥料を大量に投入したりすることにより穀物の生産性を向上し、大量増産を達成したことを指す。


地球上の水の割合

以上