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12.11.29 将来のエネルギーミックス

 夜暗くなれば壁際のスイッチを押して明かりを灯す。携帯電話で会話をする。このように普段何気なく使用している電気の生産には、日本で消費される全一次エネルギーの42%が使われています。私たちの快適な生活は電気に支えられていることがわかります。

 発電には様々なエネルギー源が用いられ、日本では石油、天然ガス、石炭などの化石資源、水力・風力・太陽光・地熱などの再生可能エネルギー、さらに原子力エネルギーなどがあります。エネルギー源を一つに頼ることは、安全保障の観点からも望ましいことではなく、従来からこれらのエネルギー源は分散して使用されてきました。各エネルギー源の構成割合はエネルギーミックスと呼ばれ、経済性に加え、エネルギー供給の安全保障、環境保護の視点から最適な組み合わせが求められてきました。

 もとより化石資源の割合を減らすことは地球温暖化対策からも重要な課題であり、日本では経済性を維持しながらCO2排出量の削減を進めるために、原子力の推進が行われてきました。しかしながら、福島第一原子力発電所の事故発生後においては、当面は化石資源の割合が大幅に増えることは避けられないものの、原子力を中心としない新たなエネルギーミックスを模索するようになっています。このような中、2011年8月26日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」が成立し、再生可能エネルギーの大規模導入に期待が高まっています。

 地球快適化インスティテュート(TKI)では、再生可能エネルギーとして期待される風力、太陽光などの電源がどのくらいの割合で導入が可能なのか、その大規模導入を実現するためには何が必要であるのか、将来のエネルギーミックスをどうすべきかについて検討を行ってきています。

 2010年に環境省が示した資料に基づいて(*1)計算される日本国内に設置可能な再生可能エネルギーの最大導入ポテンシャルは、経済産業省が試算する2030年の電力総需要予測(*2)に対して、太陽光では28%、風力では将来の導入が期待される洋上風力も含めると347%に達します。しかしながら、2011年時点での導入実績は、太陽光、風力共に電力総需要の1%未満に留まっています。その主たる原因は、未だ再生可能エネルギーが高コストであることによります。

欧州各国では、この推進が望ましいものの高コストである再生可能エネルギーの普及を図るため、電力固定価格買取制度(FIT)を導入してきました。この制度では、既存の電力会社が、政府が決定した価格で再生可能エネルギーによる電力を買い取り、電力会社がその買取費用も踏まえて設定した電力価格で国民が電力を購入します。これにより国民全体で太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギー導入に伴う付加的なコストを負担しようとするものです。
 日本でも前述のとおりFITが施行されることになったことから、現状の技術の導入コストが将来引き下げられると仮定した上で導入期待量の見積もりを実施しました。TKIの検討では、風力発電に関しては将来建設コストが2割低下すると仮定し、電力買取価格20円/kW、制度存続15年とすることにより風力発電の経済性が向上し、2030年までに電力総需要の19%をまかなう発電設備が建設される可能性があると試算しました。同じく太陽光発電に関しても、太陽光パネルの生産および設置コストが半減すると仮定した上で、電力買取価格38円/kW、制度存続15年とすると電力総需要の24%をまかなう発電設備が設置される可能性があると試算しました。
 2012年7月に施行された上述の措置法の買取価格は,風力に対し20円/kW、制度存続20年、太陽光に対し42円/kW、制度存続20年と設定されたため、日本における再生可能エネルギーの普及は当面、導入コストの低減に沿って大いに進むものと期待されます。長期的にはコスト低減に対する技術的な問題の解決だけではなく、FITにおける経済性の実証(価格設定、国民の電気料金負担の増大)、送電網等の社会インフラ整備、騒音問題の解決、洋上風力発電技術の完成などの問題が解決されれば、さらに導入期待量は大きくなるものと予測されます。

 これまでのエネルギー開発では効率性が追求され、火力発電所や原子力発電所などは大規模集中化が進んでいましたが、再生可能エネルギーでは小規模分散型へと向かいます。再生可能エネルギーを大規模に導入することには効率的でない面もあるかもしれませんが、一方で、火力発電では資源枯渇やCO2排出について、原子力発電では事故時の放射能汚染や核廃棄物処理について、それぞれかねてから懸念が指摘されています。今後のエネルギーミックスを判断するに際しては、経済性、効率性の追求は引き続き必要であるものの、エネルギー安全保障問題や環境保護も含めて、社会の持続可能性の視点が極めて重要と考えられます。

*1: 平成22年度再生可能エネルギーポテンシャル調査、環境省、2011年3月
    2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)に関する見直し検討委員会報告書、e 2、2009年6月
*2: 長期エネルギー需給見通し(案)、経済産業省総合資源エネルギー調査会需給部会、2008年3月

以上