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13.01.29 新興国・途上国の消費市場に向けて

 今後、アジアを中心とする新興国・途上国は、経済発展により人口と共に所得を伸ばし生活環境が都市化していくことが予想されています。特に現在一人あたりの年間所得が3,000ドル未満のいわゆるBOP(Base of the Pyramid)と呼ばれる層の所得が増大することによって彼等が中間層となり、その生活環境が変わることで世界の消費市場の分布も変化していきます。新たな消費者が出現するこの新規市場に向けて、BOP向けのビジネスの検討を行うのと同時に、先行調査やグループ会社のブランディングを進めることは、グローバルなKAITEKI社会の実現に向けた重要な取り組みであると考えています。

 新興国・途上国では、社会インフラが十分に整ってないため、多くの分野で先進国とは異なったステップで近代化が進んでいます。これらの国では、インフラ不足が却って発展へのプラスの要素になり、先進国と同様の発展段階を経ずに先端技術を利用することもあります。この現象は「技術の馬跳び(“technological leapfrogging”)」と言われており、代表的な例としては携帯電話や個別電源が挙げられます。

 国連の後発発展途上国に認定されているバングラデシュ(一人あたりの年間平均所得=700ドル未満)では、国全体としての固定電話の普及数は100万件を少し超える程度ですが、設置されるまでに数ヶ月を要するため近年その普及率にあまり変化がありません。これに対して携帯電話の普及率は人口比では約60%と、契約件数は約9500万件を超え、その差は非常に大きいものがあります。固定設備をあまり必要としない携帯電話が、在来の固定電話を跳び越えて普及するのは理に適っているといえるでしょう。


[写真:バングラデシュで急速に普及する携帯電話]

 この背景には、インフラ整備費用の違いや、携帯電話機メーカー各社による途上国向け商品の展開に加え、通信サービス各社による、利用者の生活欲求に即した通信・金融などのICT分野でのサービスが提供されていることが要因として挙げられます。

 また、バングラデシュの電力事情に関しては、携帯電話等の電化製品の普及に併せて、電力網のない無電化地域においても、局地分散型発電、すなわち系統電力に頼らない家庭ごとの電化が進んでいます。バングラデシュ全体としての電力網の普及率は約50%ですが、ダッカなどの都市部で約75%である一方、農村部では約25%にとどまっています。さらに、発電に使う燃料となる一次エネルギーは、国内で産出される天然ガスにより約70%が賄われていますが、ガス田が東部に集中しているため、国の東西でも電力普及率に大きな差が生じています(東部=約80%、西部=約20%)。そして、このガス田には資源枯渇の懸念があるため2010年以降配電網の敷設は行われておらず、新規の電気契約も原則禁止されるなど普及が停滞しており、停電も頻繁に発生しています。

 このような状況の中、局地分散型発電による給電システムとしてIDCOL(Infrastructure Development Company Limited)社による家庭用太陽光電池(SHS=Solar Home System)の普及計画が2003年に始まり、2008年迄に5万件という初期目標が設定されました。この計画は予定を上回るペースで急速に導入が進み、2011年には、最新目標が2014年迄に250万件と見直されました。この普及を強力に推進しているのが、現地のグラミンシャクティなどのNGO等の民間団体です。
 前述の普及ペースから、持続可能で安全な太陽エネルギーを利用し、電力網を必要とせず各家庭への給電ができるという太陽光発電パネルへの現地の期待が大きいことがわかります。


図:IDCOLによるSHSの導入状況
IDCOL 「IDCOL Solar Home System Program in Bangladesh, Nov. 1~2 2012」から作成

 三菱ケミカルホールディングスグループでは、一貫して軽量でフレキシブルな薄膜型の太陽電池を追求していますが、現在はアモルファスシリコンを用いたタイプを販売中であり、さらに、現在フィルム状の有機太陽電池を開発中です。軽量、フレキシブルフィルム状の太陽電池は、強度の不足する屋根にも安心して設置できること、強風などの天候悪化時には屋内に片付けたり、複数の家庭で共有使用出来ることなど、その軽量性、可搬性や設置形態の自由度などを活かして、従来の「硬くて重い」結晶シリコン太陽電池では想定できない新しい利用の方法が期待されています。
 現在、地球快適化インスティテュート(TKI)では、一般財団法人アライアンス・フォーラム財団と共に国際協力機構に共同提案し採択されたプロジェクトにおいて、このような新しい利用方法の開拓を目指した活動を進めており、フィルム状の有機太陽電池の新興国・途上国への普及可能性についても検討を進める等、新興国・途上国で求められるKAITEKIの姿を追究しています。


[写真:バングラデシュでの住宅屋根への太陽光発電パネル設置風景]

 このように、それぞれ独自の社会状況を有する新興国・途上国において、ビジネスを通じたKAITEKI社会を実現するには、現地のパートナー組織と共に各地域の生活に密着したニーズをつかみ、それを持続可能なものとして提供することが求められます。同時に、自らの有する付加価値商品を現地で紹介し、そしてさらに消費者を巻き込んだ潜在ニーズの探索を通じて、新たな価値を創造していくことも重要である、とTKIは考えています。

以上