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13.06.05 新しい化石燃料による米国経済の再生

 シェールとは頁岩のことであり、日本では硯の原料となるが、米国においてはこの地層中に天然ガスなどの化石燃料が多く含有されていることが知られていた。最近、この頁岩層から実用的なコストで天然ガスや原油が採掘できる技術が確立されたことから、日本においても2012年には「シェールガス革命」として、一般紙に何度も掲載されたり、テレビでも放映されたので広く知られるようになった。TKIでも、この大きな変革が将来にどのような影響を与えるのかを以前から調査していた。ここでは、シェール革命による米国経済の再生と、それとは対照的な日本への影響について概説する。

 化石燃料としては天然ガスと原油及び石炭が代表的であり、世界の1次エネルギーの80%以上がこの3つの燃料で占められている。化石燃料は埋蔵量が有限であり、従来は天然ガス60年、石油45年、石炭130年で枯渇すると言われていた。

 天然ガスは主にメタンガスであり、パイプライン輸送の他は、冷却・液化して専用タンカーで運搬する。3つの化石燃料の中では、天然ガスが最も二酸化炭素の排出量が少ない(単位熱量当たりのCO2排出量は石炭100:石油80:天然ガス55)が、運搬する際には冷却・液化する費用が高いという特徴がある。原油は液体なので取扱いが3つの燃料の中で最も容易であり、車の燃料に広く使用されているが、「アラブの春」と呼ばれる北アフリカから中東における旧政治体制の崩壊の影響等により、最近の価格は100ドル/バレルと高いレベルで推移している。一方、石炭は固体なのでハンドリングが難しく、不純物除去が容易ではないという欠点はあるが、最も安価な化石燃料である。

 1970年台まで米国では原油が大量に生産され、それに随伴する天然ガスも製造されていたが、近年はその生産量が減少、代わって中東からの輸入が増加するようになった。また、天然ガスも非在来型のタイトサンドガスやコールベットメタンなども生産されるようになったが、需要に追いつかず、中東からの輸入が計画されていた。このような中で、シェールガス(=天然ガス)の生産量が2008年頃から急激に増加した為、米国の天然ガス価格は急落した。リーマンショック前の15ドル/MMBtu(MM:億、Btu:英国熱量単位)から3ドル/MMBtuにその価格が低下したが、その後もその価格が維持されている。従来、天然ガス価格は米国においても原油価格にリンクした動きをしていたが、このように原油価格の高騰とのリンクが外れたことは驚くべきことであった。

 図1に米国のシェールガス田,油田の分布を示したが、米国内に広く分布することが判る。

図1)米国48州のシェール田分布図
引用:Energy Information Administration (EIA) based on data from various published studies

 米国内の天然ガス価格が安く維持されていることから、類似の採掘手法での生産が可能で市場価格が天然ガスより高いシェールオイル(原油)に生産が移行している。米国ではシェールガス田の近くにシェールオイル層が広く存在していることが多く、シェールオイルについても採掘価格を低減する技術開発が進み、生産コストが50ドル/バレル以下に低下した結果、その生産量が大きく増加している。即ち、原油についても米国は石油を自国で製造する従来の姿に戻りつつある。

 シェールオイルのほかに、メキシコ湾海底からの原油やカナダからのオイルサンドの輸入などを含めると、2020年には原油を北米以外の国から輸入する必要がなくなり、エネルギーの自立ができると予測されている。新しい化石燃料資源が安価に製造できるようになったことで、米国は天然ガスと原油の生産国として再生することとなった。また、これらを原料とする化学工業でも競争力が回復したことから、製造設備の増設や新設の計画発表が相次いでいる。また、安価な天然ガスを原料とした電力や暖房費用も安くなることが期待され、各種の製造業は競争力を回復し、米国経済は全般的に上向くと推定されている。

 一方、日本では、北米からの安いシェールガスの輸入が期待されている。しかしながら、天然ガスを日本に運搬するには、冷却費用として約3ドル/MMBtu、日本への運搬費用に約3ドル/MMBtuを要するとされているので、米国より約6ドル/MMBtu高くなる。例えば、米国で天然ガスが4ドル/MMBtuの場合、日本では10ドル/MMBtuと2.5倍になる。一方、現状の日本の天然ガス価格は原油価格にリンクしているので約18ドル/MMBtuであり極めて高いレベルになっている。しかしながらシェールガスの輸入が可能となれば、依然米国よりエネルギーコストが大幅に高いという状況は残るが約18ドル/MMBtuの1/2程度に安くなることは期待される。

 従来から化石燃料資源が少なかった日本では、シェール資源も多くは期待できず、メタンハイドレートも実用化レベルまでには未だ遠いようである。また、再生可能エネルギーも全般的に規模が小さいことから電力コストとしては高い。従って日本では、まだ規模の小さい再生可能エネルギーの低コスト化及びその普及や、化石燃料の低価格調達に努めると共に、地道ではあるが省エネルギー技術・製品(最終消費でのエネルギー効率の向上)のブラッシュアップが非常に重要と考えられる。