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13.10.08 「KAITEKI」な農場形態の確立を目指して



図1 太陽光利用型(三菱樹脂アグリドリーム)

 今から約1万2千年前に始まった農業は、野生品種から栽培品種への改良や、灌漑などの技術の発達により生産性が向上し、多くの人々を養ってきました。特に20世紀に入り化学肥料の生産技術や化石資源を燃料とした農業機械の普及が、農作物の生産量を飛躍的に向上させました。その結果、人口が爆発的に増加し、今後も現在の1.5倍まで増加するとの予測も発表されており、これを賄うためさらなる農業生産の拡大が必要とされています。このように人類にとって福音をもたらした農業技術でありますが、一方、地球環境に対しては多大な負荷をかけており、肥沃度の喪失を原因とする土壌の劣化によりこれまで栽培が行われていた土地が利用できない事態も増えています。また、地球温暖化に伴い気候変動の幅が大きくなり、農業生産にも大きな影響が生じています。

 このような環境や人口問題の解決策の一つとして近年開発が進んでいるのが、植物工場です。植物工場とは、農作物の生産形態として土を使用せず、施設内の温度、光、炭酸ガス、養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、作物の播種、移植、収穫、出荷調整まで、計画的に一貫して行う生産システムのことです。すなわち、外界と切り離すことで植物にとって快適な条件を作りだし、これにより天候に左右されることなく病害虫の被害を受けずに年間を通して農作物を安定供給することを可能にします。さらに栽培条件を調節する事により、好みの味や成分を作物に加える事も可能とされています。

 植物工場の形態には、太陽光を利用する太陽光利用型(図1)、人工光を利用する人工光利用完全閉鎖型(図2)があります。太陽光利用型は太陽光を利用するため比較的安価に農作物を生産することが可能ですが、完全な閉鎖施設ではないため外界の影響を少なからず受けます。これに対し、人工光利用閉鎖型は外界の影響を全く受けることがないため、南極基地など厳しい気象条件においても生産することができます。また、植物工場内の上部空間も活用する多段栽培が可能なことから省スペースの栽培技術でもありますが、人工光である照明を用いるため設備や電気に係るコストは余分にかかります。

図2 人工光利用完全閉鎖型(三菱化学)

 植物工場の太陽光利用型と人工光利用完全閉鎖型、両タイプの特長を合わせた植物工場の概念として、太陽光を用いて多段で栽培する「垂直農場」(vertical farm)がコロンビア大学のディクソン・デポミエ教授より提唱されています(図3)。これは遠い未来の究極の農業生産スタイルであり夢物語のように見えるかもしれませんが、地球快適化インスティテュート(TKI)では、そう遠くない時期に実現できるものと考え、調査・研究に取り組んでいます。三菱ケミカルホールディングスグループが保有する新素材やエネルギー関連技術は、このような革新的な農業形態を実現するために大きな役割を果たします。TKIは、地球、人間、そして植物にもKAITEKIな未来の農場の姿をいち早く具現化できることを目指しています。


図3 垂直農場イメージ