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13.11.05 運、調子、あるいは統計の話

 過去の経験から「とにかく美味いから行こう」と友人を連れて行ったレストランがイマイチで、苦い思いをしながら言い訳をしたことはないだろうか。それは、あなたの舌が悪いのではなく、統計思考(スタティスティカルシンキング)が足りなかったのだ。

 言ってしまえば、シェフだって調子が悪いこともある。あなたの体調がいつも一定とも限らない。27℃を超えるとアイスクリームが売れるように、気候だって味覚に大きく影響する。さてそんなことを考えてみると、一度行っただけでレストランの評価ができるものだろうか?

 つまり、誰もが知っているように、物事には波があるのだ。いいときもあれば、悪い時もある。追い風のときもあれば、向かい風のときもある。ウサイン・ボルトがいつも100mを9秒58で走るわけではないように、どんな事柄にも平均的な出来というものがあって、それに偶然が組み合わさることで、たまに自己ベストが出たりするのだ。

 統計思考とは、ものすごく極論すれば、この物事の波をうまく考えながら正しい結論を導く考え方である。

 好印象なレストランを見つけた。友人を喜ばせてやろう。そう思ったときに、もし統計思考を働かせるなら、やり方は2つある。ひとつは、そのレストランに何回も行って食べまくり、いいときと悪いときの味を確かめることだ。もしいい時は素晴らしく、悪い時でも許容できるレベルで、そして平均的に美味しいと感じるなら、自信を持って友人を連れて行けるだろう。
もうひとつのやり方は、美味しかったときの状況をできるだけ再現することだ。同じ季節、同じ曜日、同じ時間、同じ座席、同じメニュー……。そうすることで、出来不出来の波を避けられる確率が高くなる。

 この考え方は、レストランの評価に限ったことではない。
例えば社内で成功したプロジェクトがあったとしよう。では次のプロジェクトでまた成功するにはどうすればいいか?まぐれと言われないためにはどういう工夫の余地があるか?もし統計思考を用いて先と同じ考え方をするなら、やり方は2つ。ひとつは、これまでの無数のプロジェクトの結果を参考に成功の要因を解析、次のプロジェクトに適用できる要因を利用すること。もうひとつは、先の成功例を完全に真似することだ。

 もちろんレストランと違って、会社では全く同じプロジェクトを2度やることはない。だから成功例を完全に真似するのは難しい。したがって、1つ目のように、多くの例から成功の要因を抽出するのが現実的だろう。

 統計というのは、過去のデータを振り返るだけではない。そこから重要なエッセンスを抽出し、それを使って未来を予測するための学問だ。パフォーマンスに波があるなら、その主要な要素を浮かび上がらせてくれる。データが足りないなら、どれだけ不足しているか示してくれる。そうやって、レストランにもう一度行ったときに美味しい料理に出会える確率や、ベストな味を得られる条件を計算してくれるのだ。

 地球快適化インスティテュートでは、まずはレストランではなく (KAITEKI CAFE はお薦めだけど)、ヘルスケアと有機化学の分野で統計思考を取り入れた研究を行おうとしている。また、うまくいった健康管理の例を解析し、個人の特性に応じて効果が出やすいヘルスケアサービスを可能にする研究や、過去の成功例から要素を抽出し、安全でよく効く薬を設計するための技術についても統計思考を利用して開発が行えると考えている。
私たちにとって統計思考とは「長い歴史を生かした未来志向」であり、この考え方を大切にすることで、少しでも早くお客様に商品やサービスを提供することを目指している。