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14.09.11 最近、効率良く眠れていますか?


cat #391 by K-neko TR, (CC BY-NC-ND 2.0)

 地球快適化インスティテュート(TKI)では、VITA(生命)の領域のテーマのひとつとして、睡眠の健康との関係、特にメンタルヘルスへのアプローチを検討しています。検討にあたっては、まず自ら文献を調べたり、調査会社に委託したりして情報を収集していますが、睡眠の分野も日々の技術的な進歩、それを踏まえた事業の展開が顕著な分野であることから、最新の生の情報が重要だと考えて、学会やインタビューで直接研究者や事業担当者に会っての情報収集もしています。その中から最近の日・米の睡眠学会で紹介されたトピックスをご紹介しましょう。

 学会でひと際目につくのが企業ブースで、これら企業のブースで話を聞くと、この業界で今、何に注目が集まり、またどのようなビジネスが成功しているか、が実感できます。今年の睡眠学会では、日米ともに睡眠時無呼吸症候群(OSAS)関連の展示が目立ちました。広く知られている通り、OSASは寝ている時に息が止まってしまう病気で、日本の潜在患者数は200~300万人と推定されています。本人が気付いていないことも多いこの病気の恐いところは、昼間の眠気が思わぬ事故の原因となるのは勿論のこと、OSASにより脳卒中や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが高くなるところにあります。


“Sleep2014”第28回
Annual Meeting of the Associated Professional Sleep Societies, LLC (APSS)、2014年6月。
米国ミネアポリス州での学会会場。暑かったので外に人がいません。

 学会では、実に多くの人が不眠に悩んでいることが報告されています。日本睡眠学会では、不眠症状の人は約35%、日常生活に困っている不眠症の人が約10%、睡眠薬を処方されている人が約5%で、その多くは高齢者であるとの発表がありました。このような状況の中、不眠症の治療法として最近注目されているのが、“不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)”です。これは、不眠を訴える人を指導し、その人の認知の仕方と行動を変えることによって、良く眠れるようにするという方法です。例えば、不眠を訴える高齢者の話を聞いてみると、たくさん寝るために早く寝床に入ったものの、なかなか寝付けず、結局明け方まで何度も途中で目が覚めてしまうということが多いようです。実際の睡眠時間を、寝床にいた時間で割ったものを睡眠効率と呼び、睡眠評価のひとつの指標とされていますが、本例のような高齢者では、この睡眠効率が悪くなっていると言えます。そして実際には、不眠を訴える一方で、無意識のうちに昼間にウトウトしていることも多く、眠りたいという気持ちから更に無理な早寝を試みて、ますます眠れなくなるという悪循環に陥ってしまいます。CBT-Iでは、敢えて一定の時刻まで布団に入ることを我慢させ、朝も多少眠くても一定の時刻に起きる様に指導をします。起きている時の生活パターンこそが、睡眠に重要であることを利用した治療法と言えるでしょう。




賑わう企業ブースエリア

あるブースでの特別なベッドの展示

 最後に、睡眠と認知症との関係を研究した例をご紹介しましょう。米国睡眠学会で、”2014 Outstanding Scientific Achievement Award”を受賞したワシントン大学のHoltzman教授らの研究です。彼らは認知力の低下が起きていない中高齢者を対象にして、先ほどの睡眠効率と脳脊髄液中のアミロイドβの濃度との関係を調べました。アミロイドβは、アルツハイマー病の二大病変のひとつである脳内の“老人斑”を構成する物質です。研究の結果、睡眠効率の悪いグループほど、アミロイドβの濃度が異常値を示す人が多い事が解りました。一方、アミロイドβの蓄積については、家族性のアルツハイマー病患者を対象とした研究で、病気が発症する20年も前から始まっているということも分かっています。これらの結果から、効率良く眠ること、良く運動して日々の食事にも気を付けることは、今日の貴方の健康のみではなく、20年後の貴方の健康にも大切だろうと言えそうです。

 TKIでは、睡眠が健康にもたらす影響をよく調査した上で、疾病予防や健康の増進にどのように利用できるかを考え、将来の我々の健康、さらには“人類全体”の健康に寄与していきたいと思います。