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14.10.22 『東京大学総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座』への参加
~種子島プロジェクトにみる日本の課題と産業連携~


種子島南部の海岸線と遠くに種子島宇宙センターを臨む

ボンバルディア機のプロペラの回転数が落ち機内のエンジン音が少し低くなる中、さらにゆっくりと南下していくと左手の窓から種子島の島影が見えてきた。しばらく機首を南にとり、種子島の細長い海岸に沿って速度を落として機は進んでいく。ほどなく左翼を海側に大きく傾け左バンクをかけて旋回し、今度は島に対して垂直になる方向に機首を向けてさらに高度を下げていく。そのまま種子島の山々の頂を覆う雲の中へと飛行機は入っていくが、その雲の中からほぼ島の真ん中に作られた種子島空港が現れ、飛行機は吸い込まれるように滑走路に着陸した。
種子島は、面積約445㎢、人口31,574 人(平成23 年国勢調査)の鹿児島県の南34kmほどのところに浮かぶ自然豊かな島である。種子島宇宙センター、鉄砲伝来の地「門倉岬」などの観光地でも有名である。観光業の他の産業は、サトウキビや甘藷の栽培、畜産業を中心とした第一次産業が基幹をなし、、さらにはこれらの農産品を原料とした製糖業,焼酎やでん粉の製造をはじめとする食品・飲料の製造が盛んである。しかしながら一方で、これらの一連の産業は、天候や国の農業政策等,外部の影響を受けやすく、脆弱な産業構造である、とも言われている1)

 飛行機を降り、油断すると身体を持っていかれそうな強風の中、ターミナルビルへと足を向けた。実はこの風が、種子島がすぐ隣にある屋久島とは大きくその植生を異にする原因とも言われている。つまり、九州最高峰の宮之浦岳(1,936m)を抱える屋久島と異なり、種子島は幅が12km程度、かつその山々は標高が200m程度しかないため、海からの潮風が山全体を吹き抜けていく。この厳しい強風とスギ人工林最南端という環境条件もあって、種子島の林業は事業的に厳しい環境におかれている。杉を植えても樹高が高くならないため(本土の人工林に比較して10mくらい低いとされている)生産性が上がらず、また温暖地であるため虫害を受けやすく上質材が少ない。さらに島の農地、道路、竹林といった土地利用とともに、森林の所有形態が入り組んでいて人工林が分断されていることから林業の作業性が極端に悪い・・・。ところが土地利用の観点でみると離島という限られた土地のうち森林の割合は53%を占めている2)。島の土地利用、産業の活性化を考えると、これらの状況をいかに克服して種子島の林業をどう活性化していくかが大きな課題となっている。


種子島の杉林(左)と林業(右) ~いずれも東大「プラチナ社会」総括寄付講座提供~


種子島のサトウキビ畑(成育途中)
~東大「プラチナ社会」総括寄付講座提供~

 種子島内を車を走らせていると、あちらこちらでサトウキビ畑が目に入ってくる。サトウキビは、種子島農業の主幹生産品である1)。種子島にはこの特産のサトウキビを原料として砂糖に加工する工場があり、製糖工業も重要な産業の1つとなっている。サトウキビは暖かい地方の産物と言うイメージがあるが、生育過程で見てみると、寒い時期に糖分が茎内に蓄積されるという特徴があるので、暑い時期ばかりでなく適度な寒い時期もないと良質なサトウキビが得られない。その点で種子島や奄美諸島、琉球諸島は気候的には良質なサトウキビの生産が可能な地域とされている。しかしながら一方で、サトウキビの生産を種子島の産業として考えると、離島という地理的な環境のため耕作域の制約があり、さらに地方のご多分に漏れず人口の減少、高齢化の進行から労働力にも制約が出てきている1)。加えて製糖工場としては、サトウキビに収穫期があるため一年を通じてコンスタントに操業することができない、という悩みもある。

 西之表市街地に車が入って来ると徐々に街並みが目立つようになり、更にガソリンスタンドの表示が目に飛び込んでくる。その価格は、本土に比べて1リットル当たり15円~20円くらい高いだろうか・・・言わずもがなであるが、離島の一番の制約は物流である。島で産出しないものは基本的にすべて海上、空路等の輸送に頼らなければならず、これらの輸送コストが島で得る商品・サービスには必ずかかってくる。ガソリンや農業・林業機械用の燃料、発電に必要なディーゼル燃料などのエネルギーも例外ではない。末端の小売価格にどれくらい上乗せになっているかは物品にも拠るのだろうが、島外から来るとガソリンは相当に高い、という印象を受ける。

 これらの種子島の状況を踏まえて、東京大学総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座3)の大久保教授、菊池講師らのグループは、種子島のサトウキビ生産-製糖工場を核とした効率的な産業連携の研究4)をする「種子島プロジェクト」を島内の一市二町(西之表市、中種子町、南種子町)、地元の有力産業、各種団体、複数の大学との連携のもとで展開している。サトウキビを絞るとその搾汁から砂糖が生産できるが、これまで製糖用のエネルギー源か堆肥等の原料として利用されてきたバガス(サトウキビの絞りかす)が島全体の電力の発電用燃料として利用が可能で、島のディーゼル発電の一部を賄うことが考えられている。
バガスは植物由来であり化石燃料とは異なり、大気中の二酸化炭素を増加させない地球にやさしい再生可能エネルギーである。さらに発電の燃料としては、バガスばかりでなく、製材所から出る、同じく植物由来の製材残材やそれらをチップに加工したもの、さらには、集積方法に課題を残しているものの、林業で副生する間伐材を使用することも可能である。また、発電や製糖に伴って発生する大量の排熱を他の産業や民間に供給することも検討している。これまで化石燃料を使っていた熱利用の燃料コストを低減させることや、豊富な熱源を利用してより高付加価値な製品を生み出せる可能性もある。これらの連携がうまく機能すれば、農業、林業、食品工業を横断的、複合的に組み合わせた新たな産業再生の構図を描くことができるのである。
これらの検討は、“離島という閉じられた環境の制約下、産業の効率の最大化を通して、衰退し続けているとされている日本の地方の再生に寄与する社会課題解決型の取り組み”と位置付けることができる。

以上、種子島の産業の現状と東京大学の取り組みを述べてきましたが、皆さまどのように感じられたでしょうか。
この種子島の状況は、世界の中で置かれている日本の状況に似ていると思われませんか? 欧米から見ると日本は島国で世界のはずれに位置します。化石燃料をほとんど産出しないので、一次エネルギーの海外依存度は96%(2012年)5)とされています。特に原発が停止している現在は天然ガスの輸入により毎月大幅な貿易赤字を計上しています。森林面積が国土の69%を占めているにもかかわらず日本の林業は衰退しており、間伐材など本来ならエネルギーとして利用できるバイオマスの利用も進んでいません。少子高齢化による人口減少も一段と進行し、2048年には日本の総人口は1億人を割るとさえ言われています6)。離島でのエネルギー供給・消費の効率化、コストの最小化、産業の活性化、高齢化対策、これらの課題に対する取り組みはそのまま将来の日本が抱える課題の解決につながるのです。地球快適化インスティテュート(TKI)では、“課題先進国”と言われている日本の将来を真に持続可能なものとすべく調査・研究を推し進めていますが、その一環として『東京大学総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座』に参加しています。