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15.02.27 太陽光利用節水型植物工場による次世代アグリビジネス
~降水量の少ないオーストラリアでの無農薬野菜栽培事業~

株式会社球快適化インスティテュート(TKI)は、広く社会にアンテナを張り、世界の知見を集めながら未来を予測し、イノベーションの方向性を探っています。その大きなテーマの一つとして、水・食料(農業)問題があります。
2050年までの長期の社会動向分析と食を取り巻く現状・予測分析を行ったところ、21世紀の食料需給とマーケットについては以下のようになると考えています。

1、社会的な視点も含めて食の供給を考えた場合、食料が経済的な理由で発展途上国に十分に届かない可能性がある。
2、新興国においては、経済発展に伴う生活水準の向上により、より高度な食への要求が増加する。
図1は各種農作物の世界の需要推移を示します。野菜・果実の需要の伸びがGDPを上回っています。これは世界の人口やGDPの増加に比例する以上に、新興国での食生活が豊かになる変化を反映しているものと考えられます。

(図1)

 高い経済成長を続ける新興国の人々が先進国並みの豊かさを享受しようとすることは当然の流れであり、現行のままの農業・畜産業・水産業では、食料に対する量的及び質的な需要が満たされないと考えられます。特に当社としては、大量生産のみに目が向けられた20世紀の農業では考慮される事のなかった持続可能性への視点が21世紀の農業・食で最も大切であり、中でも水ストレス(後出)への対応と温室効果ガス(GHG)の削減が重要と考えています。
 淡水は地球上の水のわずか2.5%しか存在せず、そのうち人間が利用できる割合はさらに限られており、その淡水が人口増、それに伴う食料増産、並びに経済発展及び都市化の進展により不足していくこと、そして世界の淡水の70%が農業に使われていることを考えると、限られた水を出来るだけ効率的に使い農産物を育てる次世代型節水農業の重要性が増すと考えられます。
 図2は日単位で推計した計算期間中の水需要量に対する河川からの取水量(他の水源については考慮していません)の割合を示します。

(図2)

 図2において、比1.0とは計算期間中、日単位の推定される水需要が河川からの取水で完全に満たされることを、0は全く満たされないことを示します。赤くなっているところが水需要に対する供給量の少ない、水逼迫地域です。世界の年間の河川流量は多いものの雨期と乾期が明瞭で、乾期に渇水問題を抱える、南アジア・東南アジアやアフリカのサヘル地域(サハラ砂漠の南の縁)なども、水逼迫地域として示されています。これからわかるように、今後の水需要の増大が見込まれるメガシティ(人口1000万人以上)の多くで水がさらに逼迫していくことが予測されます。
 また、上記の予測では考慮されていない、気候変動の大きさも近年問題となっており、農業生産にも大きな影響が生じています。オーストラリアはもともと降水量が少なく世界で最も乾いた大陸と言われていますが、しばしば干ばつに見舞われて小麦等の収穫量が大きく減少する問題が生じています。例えば2006年のビクトリア州(メルボルンがある豪州南部の州)では年間降水量が367mmと、観測史上3番目に少ない降水量でした。オーストラリアは、こういったことが頻繁に起きる国ですので、水不足が国家を揺るがす深刻な問題として捉えられています。

 人口増と都市化に伴う食糧増産と気候変動にも対応できる持続可能な農業として、当社は、都市近郊において、太陽光利用節水型植物工場により日本の野菜を生産・供給するビジネスを企画しています。その第一弾として、異常気象が多発しているオーストラリア・ビクトリア州におけるアグリビジネスを提案し、三菱樹脂グループ及びオーストラリア・ビクトリア州環境・第一次産業省の関連会社であるAgriculture Victoria Services Pty, Ltdと連携して事業化に向けて取り組んできました
(ニュースリリース「オーストラリアのビクトリア州で太陽光利用型植物工場の実証試験を開始」2013年4月4日付;「オーストラリアでの太陽光利用型植物工場の実証試験の規模を拡大」2013年10月21日付)。現地での試験栽培の結果、オーストラリアの厳しい環境条件でも、日本同様の高品質の野菜を無農薬で栽培できることが実証され、同州の首相からも高い評価を受けました。さらに、収穫した野菜を高級スーパーやレストランにテスト販売したところ、新鮮さ、無農薬、美味しさが非常に好評でした。次のステップとして、2014年7月には三菱樹脂グループ傘下に生産から加工、販売までを手掛ける現地法人KAITEKI FRESH AUSTRALIA PTY LTDを設立しました(三菱樹脂プレスリリース「オーストラリアで植物工場産野菜を生産・販売する現地法人を設立」;ビクトリア州ライアン首相プレスリリース“Cutting edge horticultural facility to create 40 Jobs” 2014年10月20日付)。今後は事業を軌道に乗せるとともに、新たなビジネスモデルの構築に向けた検討を進めてまいります。