Activity Report活動領域・活動紹介

15.09.10 食の未来を考える:食卓のお魚から見えるお国事情


Old man and the tuna by Christoph Rupprecht (CC BY 2.0)

 世界最大の水産国は、中国であることをご存知ですか。「え、日本が一番じゃないの?」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。確かにそういう時代もありましたが、それは何十年も前のことです。かつて世界一の漁獲高を誇った日本は次第に量を減らして、今では世界第8位となっています。

 2015年現在、中国は第2位以下を大きく引き離し、その漁獲高は世界の半分に迫る勢いです。養殖による生産、中でも淡水魚の養殖生産が多いことが特徴です。統計では、淡水魚養殖生産量が、海洋での漁船漁獲高を大きく上回り、海水魚を好んで食べる日本などとは随分様相が異なります。
 中国で、最も多く養殖生産されている淡水魚は、コイ・フナ類です。年平均7.0%(1990年から2012年)とコンスタントに生産を増やし、中国の魚介類増産に大きく寄与しました。そして、さらに著しい年平均増加率13.0%(同期間)を記録した魚種があります。ティラピア類です。淡水魚養殖生産量で中国第6位にランキングされています。


古代エジプトの都、テーベの壁画に描かれたティラピア。
Central Garden Pool in the Garden of Nebamun’s Tomb Painting, British Museum, late 18th Dynasty, circa 1350 BCE (Photo in public domain)

 ティラピアは、アフリカのナイル川流域を原産とするカワスズメ科の魚です。ティラピアに高い繁殖力があることは、古代エジプトの時代から知られていました。この養殖に適した特質が、広く生産される理由です。味が良いこともあって、中国では、外来種でありながら生産規模拡大が続いています。

 一方、日本では漁獲高が減るとともに、魚介類の自給率は50%(平成25年度、生産額ベース)に低迷しています。口に入る魚の半分は輸入品ということです。実際、スーパーなどの鮮魚売り場では、中国産のウナギや、東南アジア産のエビ、チリ産のサケなどが、定番商品となっています。コンビニを含め多くの外食産業が使用しているノルウェー産のサバや、オランダ産のアジなども知らず知らずのうちに食べています。ある意味、食文化を維持しているとも言えますが、旧来から食べている魚を自分では獲らずに海外からの調達に切り替えた、それが今の日本の姿です。


Fresh fish in the supermarket by David Pursehouse (CC BY 2.0)

 このような象徴的な事例を見ることによって、中国と日本、二つの国の事情を窺い知ることができます。
中国は、外来種ティラピアの養殖増産を続けており、外来種が侵入することにさほど抵抗を感じていないかのようです。国民13億人のタンパク源を自ら確保せんとする国の強いメッセージが感じられます。また、生産に重きを置くことは、生産者を優先し未来を指向することに他なりません。


Wangfujing Food Market by Lori Branham (CC BY 2.0)

 日本は、食べ慣れたサケやアジを、自国では獲らず輸入で賄おうとしています。社会が、生産者優先から消費者第一に切り替わりつつあることを意味します。65歳以上の非生産者年齢人口が、既に総人口の1/4を占め、近々1/3になろうとしている日本では、そうならざるを得ません。純粋な消費者となった高齢者は、ただ今現在の生活の豊かさや便利さを求めます。高価な近海物を選ぶのか、それとも安価な輸入品なのか、日々、選択の自由を享受しているのです。こと食に限るならば、中国が将来を指向している一方で、消費者第一の日本は食の現在を見据えています。

Unaju (grilled eel on rice) by baron valium (CC BY 2.0)

 食のKAITEKI、食の未来とはどういうものでしょうか。明らかなことは、国が違えば、食べる物も異なるという事実です。ここで見たように、各々にお国の事情があるからです。当然、古くから伝わった食文化が尊重されるべきでしょうし、その他にも、人口動態や国の政策などを無視するわけにはいきません。

stead tilapia by stu_spivack (CC BY 2.0)

 このような状況を踏まえ、我々地球快適化インスティテュートは、より普遍的で全般に通底するような、食の課題に取組むことを考えています。水産業であれば、例えば、水のことがあります。すべての魚介類は、水の中で暮らしますが、これから増え続ける人類のために十分な食を得るには、どのようにして適切な水環境を維持していくべきか。又、どのような水環境が魚にとっても、人類、生物全体、そして地球にとってもKAITEKIなのか。そのような視点で研究を進めようとしています。

* 出典:包特力根白乙, 中国罗非鱼养殖产业发展及市场前景, 安徽农业科学, 33, (2014), 15-17>